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北村:いつくらいから人形作りをはじめられたのでしょうか?
金林社長(以下金林):家が代々人形屋だったんで子供のころから手伝っていましたから、
大学を卒業してすぐにこの会社に入りました。自然の成り行きでしたね。
大学では彫刻の勉強をしたのですが、実は人形士はそういった専門の勉強をしているという人は少ないんです。
たいてい、どこかの弟子に入って教わるということが主流だったので、デッサンやバランスが悪い人形が多かったんですよ。それを面白さや味、芸術と受け取ることもできるのですが、私の場合はバランスの良さが近代的な美しさとして受け取られて評判を呼んだというところはあると思います。
多くの人が人形に対して求めるところは芸術的なものではなく、かわいい、きれい、和やかになるといった感覚だと思っていますのでそういった部分は大切だと思いますね。
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金林:私が作っていたのは木目込人形といわれるものです。もともとはいまから約260年前に京都の上賀茂神社の神具のあまった木材で彫刻を行ったのが始まりとされています。
この技術を東京の人形師が持ち帰ったものが原型とされて今の真多呂人形が完成しました。
わたしで丁度6代目になります。京都の上賀茂神社からも正統な継承者であるというお墨付きを頂いています。
ただ今は、京都のほうでは作られてなく、東京と埼玉の岩槻方面が中心となって技術を継承していきました。 |
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北村:真多呂という名前は代々受け継がれているんですか?
金林:私は昭和47年に父のあとをついで二世金林真多呂を襲名しました。経済通産省指定の伝統工芸品と認められ、伝統工芸士に認定されたのが昭和53年です。
高齢の方がほとんどだったので、当時選ばれたなかで残っているのは私だけになりましたね。
北村:人形の製造・販売が主なお仕事の内容となるのでしょうか?
金林:そうですね。それが主体ですが、人形教室も行っています。
現在、その教育を受けて教授の資格を取得されているお弟子さんは全国で三万五千人ほどいます。
いわゆるプロではなく、奥様方が趣味で覚えることが目的です。
但し、教授の資格を持つと人に教えることができるようになります。そうしますと、教授価格という割引で人形の材料を安く買えるようになるんですよ。それをお弟子さんに通常価格で販売することで利益を出すことができるのです。
また、級が上がると割引率が上がりますから腕を上げるほどに利益を出す仕組みを作ることができるというわけです。
この「真多呂人形学院」制度と通信教育のシステムを私が作りました。
北村:これはよくできたシステムですね。社長が全て考えられたのですか?
金林:そうですね。このころはお稽古事にあまり種類がなかったんですよ。お茶、踊り、お花、書道といったクラシックな教室しかなかったですね。ですので当時は脚光を浴びて新聞、テレビ、雑誌等で紹介されることも多かったです。
すごい勢いで生徒さんが増えましたよ。ただ、最近は趣味も多様化しまして、ゴルフやテニスといったスポーツを始めるひとも多く、人を集めることが難しくなってきましたね。
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北村:このような仕組みを考え出したきっかけはなんだったのでしょうか?
金林:昔は「丙馬生まれの女の子は嫁にいけない」と言われていたのをご存知ですか?実際にその年の出生率は極端に低かったんですよ。ですので雛人形の売れ行きに確実に影響がでてしまうことがわかっていたのでその前年になんとか乗り切る為の対策を考えていまして、この仕組みを考案したわけです。
北村:それはすごいですね。ピンチをチャンスに変えられたんですね。
ところで通信教育の内容はどんなものになっているのでしょうか?
金林:お申込いただければ毎月ひとつの制作ツール、材料が送られてきます。やさしいものから初めてだんだんと難しくなっていくのですが、最後には教授資格検定を合格することで教授資格を取得することができます。ホームページも出しているのですが、最近はインターネット経由からの申し込みも増えてきました。
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北村:面白いですね。それだと楽しむだけでなく、やりがいもありますし、達成感も味わえますよね。
このような新しい試みをされることで会社も大きく拡大されているかと思うのですが、その成功の秘訣というのはあるのでしょうか?
金林:いろいろ考えてチャレンジしてもうまく当たるというのはなかなか難しい時代になっていると思います。
ただ、ひとつ思うことは我々が売っているのは伝統的なものですが、同じものをただ続けて繰り返すだけでは伝統にはならないと思うんです。
その時代にあった感覚、テーマ、切り口などを盛り込んで変えていかなければならないと思うんです。
例えば、博多人形というのはご存知ですか?これはもともとは伏見人形から派生した土で作る手法なんです。
博多人形は現在まで様々な新しい感覚を取り入れることで盛んに作られています。ですが、全国にあるほとんどの昔のままの伏見人形は今は廃れてしまっているんですよ。
ちょっと矛盾したように聞こえるかもしれないのですが、伝統を守る為には新しい感覚、時代にあった感覚を取り入れてどんどん新しいものを作っていくことが必要になってくると思いますね。
万代不易という言葉があります。流行に終わらず、変わらず在り続けるためにはそのときの情景にあった句を読むだけでは駄目で、時代の流れも考慮して詠まなければならいですよと言われています。
北村:なるほど。その精神が息づいている限り、真多呂人形の伝統は守られていくんでしょうね。
本日はありがとうございました。
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